刺激伝導系:心臓を動かす電気信号の通り道

心臓を動かす電気信号は、どこで生まれて、どの順番で伝わるのか。洞結節からプルキンエ線維までの通り道(刺激伝導系)を、図と一緒に整理します。

投稿2026.10.12

刺激伝導系:心臓を動かす電気信号の通り道

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前の記事では、心臓のつくりと血液の流れを整理しました。

血液は静脈 → 心房 → 心室 → 動脈の順に流れます。そのためには、心房が先に縮み、そのあとで心室が縮む必要があります。

この順番を作っているのが、心筋内を通る電気信号です。この記事では、電気信号がどこで生まれて、どの順番で伝わるのかを解説します。心電図の波形は、次の記事で扱います。

心臓は、電気の合図で縮む

心臓の壁は、「心筋」と呼ばれる筋肉でできています。心筋には、電気信号が伝わると縮む性質があり、この縮む動きを「収縮」といいます。

この電気信号は、脳から送られてくるものではありません。心臓が自ら作り出しています。そのため心臓は、脳からの指令がなくても、一定のリズムで動き続けることができます。ただし、拍動の速さは自律神経によって調節されています。

このように、電気信号を作り出し、決まった道筋に沿って心臓全体へ伝えるしくみを「刺激伝導系」といいます。

電気信号の通り道

下の図が、刺激伝導系の全体図です。心臓を正面から向かい合って見た図なので、図の左側が体の右側(右心房・右心室)になります。図の番号は、このあとの見出しの番号と同じです。

  1. 1洞結節
  2. 2房室結節
  3. 3ヒス束
  4. 4右脚・左脚
  5. 5プルキンエ線維
刺激伝導系の全体図(模式図)。洞結節から房室結節へ向かう3本の線は、報告されている結節間路(前・中・後)です。左脚の前枝・後枝は断面では正確に表せないため模式的に描き、奥側へ向かう後枝は透かして描いています。短い枝がプルキンエ線維です。

信号は、図の番号の順に伝わります。

1. 洞結節(どうけっせつ)

右心房の上部、上大静脈とのつなぎ目の近くにあります。洞結節の細胞は、外からの刺激がなくても自分で電気信号(興奮)を繰り返し生み出す性質をもっています。この性質を「自動能」といいます。

洞結節は、刺激伝導系の中で最も速いリズム(安静時でおよそ60〜100回/分)で信号を出します。そのため、正常な心臓では洞結節が全体のリズムを決めており、この役割を「ペースメーカー(歩調取り)」といいます。

洞結節で生まれた信号は、心房の筋肉を伝わって右心房と左心房の全体に広がり、心房が収縮します。血液の多くは心房が収縮する前から心室へ流れ込んでおり、心房の収縮はその仕上げとして、残りの血液を心室へ押し込みます。

図の中で、洞結節から房室結節へ向かう3本の線は「結節間路(けっせつかんろ)」です。洞結節から房室結節へ信号を伝える通り道として報告されていますが、はっきりした通り道として存在すると断定されているわけではありません。

2. 房室結節(ぼうしつけっせつ)

右心房の下部、心房と心室の境目の近くにあります。心房に広がった信号は、ここに集まります。

房室結節は、刺激伝導系の中で信号の伝わり方が最も遅い場所で、ここで約0.1秒の遅れが生じます。この遅れがあるおかげで、心房からの血液が心室に入り終えてから、心室の収縮が始まります。

なお、心房の筋肉と心室の筋肉のあいだは、電気を通さない線維性の組織(線維輪)で仕切られています。正常な心臓では、房室結節からヒス束へ続く経路が、心房と心室をつなぐ唯一の電気の通り道です。

3. ヒス束

房室結節から続く信号の通り道です。心房と心室を仕切る線維性の組織を貫いて心室側に入り、左右の心室を隔てる壁(心室中隔)の上端で二手に分かれます。

4. 右脚(うきゃく)・左脚(さきゃく)

ヒス束から分かれた2本の枝です。右脚は1本の束のまま、心室中隔の右心室側を下って右心室へ向かいます。左脚は心室中隔の左心室側に出たあと扇状に広がり、主に左脚前枝と左脚後枝の2つに分かれて左心室へ向かいます。

5. プルキンエ線維

右脚・左脚の先は細かく枝分かれし、心室の内側の面(心内膜のすぐ下)に網の目のように広がります。これがプルキンエ線維です。

プルキンエ線維は心臓の中で最も速く信号を伝える(約2〜4m/秒)ため、信号は短時間で心室の内側全体に届きます。その後、信号は心室の筋肉を内側から外側へ向かって伝わります。心室全体に信号が行き渡るまでの時間は0.1秒もかからないほど短く(心電図のQRS波の幅にあたります)、心室の筋肉はほぼそろって収縮し、血液が大動脈と肺動脈へ力強く送り出されます。

収縮の順番をまとめる

ここまでの流れを、ひとつにまとめます。

  1. 洞結節で電気信号(興奮)が生まれる
  2. 信号が心房の筋肉を伝わって広がり、心房が収縮する
  3. 信号が房室結節に集まり、ここで約0.1秒の遅れが生じる
  4. 信号がヒス束 → 右脚・左脚 → プルキンエ線維の順に伝わり、心室の内側全体に届く
  5. 信号が心室の筋肉を内側から外側へ伝わり、心室が収縮する
刺激伝導系の流れ(模式図)。洞結節で生まれた信号は心房筋に広がり、房室結節に集まります。そのあとヒス束から右脚と左脚に分かれ、プルキンエ線維を通って心室筋に広がります。黄色の枠が刺激伝導系、茶色の枠が心筋です。右側と下の注記は心電図の波形との対応で、くわしくは次の記事で説明します。

大切なのは、「まず心房が収縮し、少し遅れて心室が収縮する」という順番です。この順番があるおかげで、心室は血液を十分にためてから送り出すことができます。正常な心臓では、この一連の流れが1拍ごとに繰り返されています。

心電図とのつながり

心電図の波形は、この電気の流れを体の表面から記録したものです。

たとえば、房室結節での「少しの遅れ」は、心電図では波と波のあいだの間隔(PR間隔)として現れます。信号の通り道を知っていると、波形のどの部分が心臓のどこの動きにあたるのかを、順番に追えるようになります。

参考文献

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病気がみえる vol.2 循環器 第6版

医療情報科学研究所 編/メディックメディア

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